10.水中工事等の無人化に関する研究テーマ
研究の目的・背景
港湾、空港等の整備において、海面下での工事の相当程度を現在は潜水士に依存しているが、海面下の工事においては陸上と異なり、工事による濁りの発生等により視界が制限される場合が多く、これに加えて波浪や潮流の影響を受けて、海面下の作業は安全性・効率性などの大きな制約がある。さらに、若年労働人口の減少の中で将来的には潜水士の高齢化と潜水士数の不足が懸念され、海面下の工事の円滑な実施が危ぶまれる。一方、2007年4月の海洋基本法制定を契機に国民の海洋への関心が高まりつつある。これまで海洋においては、ゴミや油回収などの海洋環境整備や航路の開発や保全、さらには近年GPS 波浪計の設置の全国的展開が行われているところである。しかしながら海洋は、大水深で高波浪域であることから、本海域での有人作業には限界がある。
以上に加えて、近年の厳しい財政状況を踏まえ、本研究テーマでは、港湾構造物等の適切な維持管理に不可欠な劣化状況の点検・診断及び劣化部分の補修工事並びに海洋基本法の制定とともに、増加が予想される海洋における様々な水中作業等の無人化技術の開発に取り組む。
研究の概要
鋼製の港湾構造物の劣化状況を点検・診断するために不可欠な板厚計測を、構造物にこびり付いた水中生物を剥がすことなく非接触で実施可能な非接触肉厚計測技術の開発を行う。また、水深200m 程度の大水深に設置されたGPS 波浪計の係留装置を無人で点検可能な係留装置点検システムの開発を行う。
さらに、海中に設置された消波ブロックを玉掛け作業なしに無人で安全に回収を可能とする網チェーン式回収装置の開発を行う。
また、過年度に開発した水中バックホウのマニピュレータ技術を基本システムとして、各種作業に適したマニピュレータの先端部を開発することにより、様々な水中作業に適応可能な多機能化を図り、安全な水中作業の実現を目指す。
2010年度の活動
網チェーン式回収装置については前年度までの成果を踏まえ、50トンを越える大型ブロックの移設への活用方策について検討を実施した。
超音波を活用した非接触型鋼構造物点検装置については、現場への適用性向上を図り実用化を一層進めるため民間企業からの共同研究を募り、様々な構造物に適用可能な治具の開発及び取得したデータを構造物の維持管理に活かすための取扱指針の検討等に関する共同研究を開始した。
さらに、GPS 波浪計係留装置点検システムについては釜石沖海域において実際の調査工事に適用された。現地実験を行い、実海域での有効性を確認・評価した。
また、水中バックホウの遠隔制御に関し、研究所の研究者2名が渡韓し、韓国海洋研究院(KORDI)においてこれまでの研究成果等について講演を行うとともに韓国側研究者との意見交換を実施した。その後、韓国側研究者が来日し、更に詳細な意見交換を実施している。
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